西洋の化粧文化史/馬鹿げた処方

西洋の化粧文化史/馬鹿げた処方

kesyouhin

プリニウスの『博物誌』(西暦一世紀)は彼が464作家の二千巻の書物を読み、それに彼自身の見聞を加え、約二万の項目を三十七巻にまとめた世界最初の百科事典であるが、そのなかにも「顔の病のクスリ」という項目に、美顔料の処方がとりあげられている。

それによると、

「顔に化膿性の吹出物ができたときにはバターでとることができるが、鉛白をバターにまぜた方が効果的である。疱疹(皮膚病)の吹出物の場合には純粋なバターを塗り、大麦の飯を粉にしてその上に塗り重ねるといい」

といった処方がでているが、当時羊毛の脂肪でつくったポマード状のものが傷を治すクスリだったので、バターというのはそれの一種とみることができる。

なかにはプリニウス自身が「馬鹿げている」と思っていた処方もすくなくなかったが、彼は「婦人たちを喜ばせるためには黙殺するわけにはいかない」といってそれを列挙している。

「皮膚の白さを保ち、シワをなくするには、牝の子牛のケズメとクルブシの間の骨を四十日間昼夜ぶっ続けに煮て、完全に解けてしまったらそれを亜麻の布につつんで顔にあてがうとよい。また牝牛のフンを用いると頬のバラ色がよくなるが、陸ワニ(小形で、陸のもっとも香のよい花のあいだに住んでいる)の腸を用いると一層よい。いずれの場合も、それを使用する前後に顔を冷水で洗わねばならない」

というのなど、その一例である。

プリニウスによると、「陸ワニの腸はキプロス島の油にまぜて用いると顔にできた傷を治し、水にまぜて用いると顔にひろがる性質の病のすべてを治し、同時に皮膚の自然の色を取り戻す。そのほか、ソバカスやすべての斑点や吹出物を消す」となっている。

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