西洋の化粧文化史/化粧品はクスリ

西洋の化粧文化史/化粧品はクスリ

kesyouhin

ローマ時代の化粧品のことを記した最も古い文献の一つに、オーヴィディウス(英語ではオヴィッド、西暦前四三~後一七年)の書いた「化粧品」というエッセイがある。

残念なことに現在は短い断片しか残っていないが、その頃の化粧品がどんなものだったかの手がかりになるので、その一部分を紹介してみよう。

「あなたの顔をまぶしく光る白さにする術を私から習いたまえ。まず最初にローマの船で運ばれてきたリビアの大麦の皮をとる。その二ポンドに同量のインゲン豆の粉を十個の鶏卵とをまぜ、よく乾して粉にする。

それに春におちた鹿のツノの精を全量の六分の一加え、それを完全な粉にする。

その粉をフルイにかけ、水仙の球根十二個を臼でついたものと二オンスのゴムとそれと同じ量のタスカニーの種子(タスカニーはイタリアの中央西部、何の種子かは不明)と一八オンスの蜂蜜を加えると、完全なクスリ(美顔料)になる。

この練りものを顔の全体に塗ると、どんな婦人でも皮膚がやわらかくなり、鏡よりももっとピカピカする。」

ローマ人はやたらにいろんなものをまぜることがすきで、料理とクスリの処方がそれを代表していた。オーヴィディウスは、このようにしてつくられたものを「外面のクスリ」と呼んでいた。

後世ではそれを「美顔料」と意訳しているが、事実それは化粧品として独立したものではなく、クスリの一種であった。

ついでにもう一つ顔のしみをとるクスリの処方をあげると、「ルピナスの種子を焙ったものとインゲン豆と鉛白と赤い硝石とイチハツの根を蜂蜜で練る」となっている。

「神々にささげる乳香もすぐれた化粧品である。神々に快い気持を与えるものなら人間にとっても同じである。それを硝石、ウイキョウ、没薬(アラビアやアフリカ産のカソラン科の植物から得られるゴム質樹脂。薬用)、バラの葉、塩化アンモニウムにまぜたものは、すぐれた化粧品になる」ともオーヴィディウスは書いている。

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